聴覚に障害があるからテレビが見られない、テレビを見ない。そういう方は 実は大勢いらっしゃいます。補聴器などを使ってある程度日常の会話はできる 人でも、生活音や番組中の背景音・BGMに埋もれてしまう中で登場人物の台 詞を聞き取るのはほとんど不可能なんです。
テレビドラマやバラエティやCMが見られないからといって、生死に関わる
わけではありません。しかし、同僚や友達の話題についていけない、家族の団
らんにも入れないというのはとても寂しいことです。映画でも邦画には字幕が
つきませんから、見られません。北野武監督のあの話題作だって見られないま
まです。
また、今までの災害時の緊急番組にも字幕はついていませんでした。一刻を
争う緊急時に、ラジオは使えないテレビもわからないでは、聴覚障害者はどう
やって生き延びたらいいのでしょうか。
耳が不自由ならテレビでしゃべってる内容がわからなくても当たり前じゃな
いか・・・そういう風にも思われるかも知れません。しかし、それは本当に当
たり前なのでしょうか。
1997年に郵政省は、「2007年までに生放送など字幕をつけることが
困難な番組を除く全てのテレビ番組に字幕をつけましょう」という字幕放送の
普及目標を設けました。しかし残念ながら、まだ今のところ字幕がつけられて
いる番組はごくわずかです。技術的にクリアできない問題があって、字幕がつ
かないのであれば、仕方がないでしょう。しかし、NHKなどは限定的ではあ
りますが、一部のニュース番組に生で字幕をつける試みをしているほどで、生
でない番組に字幕をつけることは技術的になんら難しいことではありません。
また、国からも補助が出ていますから、字幕をつけるのに費用がかかるからで
きないということもありません。
なのに、相変わらず見たい番組には字幕がついてないんです。なぜなんでし
ょうね。
台詞が聞こえないのは当たり前でしょう。でも、字幕という代替情報伝達手
段がありながら、それが保障されていない現状は決して当たり前じゃない。何
かがおかしいんです。欧米でもアジアの近隣諸国でも、生のニュースを含む実
に多くの番組に字幕がついています。
情報社会といわれる現代、社会生活上テレビの果たす役割は非常に大きいも
のがあります。ところが、日本では技術的・経済的になんら問題がないのにも
関わらず、聴覚障害者は情報から阻害されている。障害者が軽視され、差別さ
れている状況といっていいのではないでしょうか。
通訳IRCは、1999年の7月以来、インターネット・リレー・チャット
(IRC)システムを使って、インターネット上に生でテレビ番組の字幕を流
し、聴覚障害のある方もない方も一緒に字幕を楽しむ活動を行ってきました。
もちろん番組に関する著作権を持つテレビ局や脚本家の方などの許諾をいただ
いた上での活動でした。
しかし、2001年1月から著作権法が改正され、政令で定められた団体は
著作権者の許諾を得るなく、インターネット上でテレビの字幕を流せるように
なり、著作権法改正を訴えてきた障害者団体の幾つかが自ら名乗りを上げて、
インターネット字幕を始めることになりました。
しかし、そうした当事者団体が字幕制作に名乗りを上げた結果、通訳IRC
のような個人の集まりによるボランティア活動に対して、従来のように著作権
者側が理解を示し、字幕制作の許諾を出してもらえる見込みが薄くなってしま
いました。逆に、新たに名乗りをあげた団体の側もインターネットで字幕を制
作・配信するに必要なノウハウやマンパワーは持っていません。このままでは、
法律では認められたものの、インターネット上での字幕は結局絵に描いた餅で
終わってしまう危機的な状況になりました。
そこでわたしたちは、有志の集まりが著作権者から許諾を受けて、字幕を流
すという今までの活動形態から脱却し、新たな活動に踏み出す決意をしました。
通訳IRCは生まれ変わります。